顎関節症になる原因はまだハッキリと分かっていませんが、顎に負担を掛ける生活習慣が大きな原因になっていると考えられています。
ここでは、それを説明していくので当てはまることがあれば1つでも多く改善するように心がけましょう!
ブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり)
ブラキシズムというのは寝ているときなどに歯をギリギリときしませる“歯ぎしり”や、歯をグッと噛みしめる“食いしばり”のことを指します。
歯ぎしりや食いしばりといったブラキシズムは無意識で行われる動作で、他の人に指摘されないとなかなか気づくことができません。
また、無意識の動作なので力加減もコントロールできません。多くの場合、普通に食べ物を食べるよりも大きな力で顎を閉じています。
そうすると物を咬む咀嚼筋が必要以上に疲れてトリガーポイントが発生し、筋肉のバランスが崩れる可能性が高くなりますし、関節円板に常に余計な力がかかるので変形の一因にもなります。
さらに顎だけでなく歯も傷付いてダメージを受けますから、ブラキシズムには何も良いことはありません。すぐに止めましょう!
と言うのは簡単ですが、実際には無意識でやってしまうことなので対策は簡単ではありません。
起きている時の食いしばりは工夫次第で減らすことができますが、眠っている間の歯ぎしりはストレスが主な原因です。実際、受験を控えた学生や人間関係に悩みがある人に歯ぎしりが多いです。
根本的な対策はストレスの原因から離れることですが、そう簡単にいかない事が多いでしょう。そういう人は自律神経のケアや考え方を変える訓練など精神面・神経面での対策も考えていく必要があります。
ちなみに、マウスピースは歯ぎしりを解決するものではなく歯を保護するものです。マウスピースを付けていれば安心ということにはなりません。
猫背姿勢
猫背姿勢だと顎が上がり顔を前に突き出しだ状態になります。この状態では口を開けるときに収縮する舌骨下筋群が下顎を引く方向がすこし変わります。
本来なら下の図のように外側翼突筋が前方に、舌骨下筋群が後方に引くことでバランス良く開きます。
猫背姿勢の場合、舌骨が斜めに傾きます。その結果、舌骨下筋群が後方ではなく斜め下に引くことになり、顎関節に上向きの余計なストレスをかけることになります。
これはアゴを突き出した姿勢と、アゴを引いた姿勢で口を開け閉めすれば体感することができます。アゴを突き出した姿勢の方が口が何となく開けにくいと思います。開けにくいというより、顎関節付近に圧迫感を強く感じるという感覚の方が近いかもしれません。
これは僅かな違和感ですが、口は一日に2000〜3000回も開閉します。ちりも積もれば組織の変形につながっていくことは想像に難くありません。
また、私自身の経験でもアゴを突き出している人で顎関節症(クリック音があるレベル)は多いです。
ですので、アゴを突き出した猫背姿勢はできるだけ避ける必要があります。姿勢の改善は悪化や再発を防ぐために必須だと考えてください。
頬杖や横向きで寝る
頬杖は頭の重さをアゴで支えることになります。その結果として食いしばりと同じような負荷が顎関節にかかることになり、関節円板が押しつぶされて変形しやすくなります。
また、座って頬杖をつく姿勢は自然とアゴを突き出した猫背姿勢になりますから、そういう意味で顎関節によくありません。
頬杖をつくクセがある人は、顎関節には百害あって一利なしですからすぐに止めるようにしてください!頬杖をつかなくてもよい姿勢を維持することは猫背の改善にもなります。
患者さんといろいろ話をしていると、横向きで寝るという人も結構いらっしゃいます。横向きで寝ることが必ずしもNGだと言えませんが、なるべくアゴだけで頭の重さを支えないように気をつけましょう。
例えば、枕代わりに自分の腕を頭の下に置くことがよくると思います。その時に腕の位置によってはアゴに頭の重さのほとんどがかかってしまうことがあります。そうなることは避けましょうね。
ちなみに上の図のように横向きで寝ながら頬杖はアゴにとっては最悪です。全くオススメしない姿勢ですが、もしやるなら必ず手はアゴでは無く頭蓋骨に置くようにしましょう。
編咀嚼
編咀嚼とは、いつも左右どちらか片方だけで噛むことをいいます。虫歯や口内炎など口の中のトラブルがあるときは、痛くない方で噛むのは仕方ないことですが、そういったトラブルがなければ左右両方を均等に使って噛む必要があります。
片方だけで噛むクセが付くと、咀嚼筋のバランスが崩れるだけでなく、関節にも不自然な力がかかることになります。それは関節円板の変形や靱帯の伸び、筋肉の故障の原因につながって行きます。
また、頬のラインが左右で違って見えたり、アゴが傾いたように見えたりと影響が外見にも現れてきますから気をつけましょう。
悪い噛み合わせ
一昔前は、歯の噛み合わせの悪さが原因で顎関節症になると言われていました。しかし、現在の流れでは噛み合わせは数ある原因の一つであり、噛み合わせさえ直ればOKというほど単純ではないことが分かってきています。
しかし、噛み合わせの悪さは編咀嚼や歯ぎしりと関連するという説もありますし、噛み合わせが悪くて食いしばれないという状況は体全体のバランスにも影響を及ぼします。ですので、あまりに悪い場合は矯正することも考えるべきだと思います。
<< 顎関節症のメカニズム|顎関節症のセルフケア・予防 >>
- 顎関節の構造と動き
- アゴに関係する筋肉
- 顎関節症のメカニズム
- 顎関節症になる生活習慣
- 顎関節症のセルフケア・予防