顎関節症では「あごが痛い」「口が開かない」「口を開けるときに音がする」といった症状が発生します。ここではそのメカニズムを解説します。
顎の構造や筋肉について分からない人は先に「顎関節の構造」や「顎関節の筋肉」のページをご覧になってから読むと理解が深まります。
口を開けるときにカコッと音がする場合
口を開閉するときにカコッと音がしたりカックンと乗り越える感触がある場合があります。このときに、あなたの顎関節でどのようなことが起こっているかを説明します。
前提として、この症状がある方はすでに関節円板が変形した状態にあります。変形する理由は別の所で考察しますが、変形した軟骨は自然に元に戻るものではありません。
症状がある人にとっては少しショックかもしれませんが、口を大きく開けることができ、日常の生活に支障が無ければ特に手術などをする必要も無いと思います。
では、下図を見てください。
本来ならスムーズに下顎頭が移動するところが、関節円板の凸になった部分を乗り越えるときにコリッとした音やクリック感が発生します。無理矢理関節を動かすことになるので、関節を包む関節包や靱帯にストレスがかかることになりますが、だからといって痛みがでるわけでもありません。
痛くて口が開かない場合
次に口が開かなくなった状態を解説します。
下の図の説明では「関節円板が変形することで引っかかって動かない」という説明をしています。これは私が初めて顎関節症について勉強したときに教わった内容です。
当時は「なるほど!」と思ったのですが、よく考えると、本当にここまで関節円板が大きく変形することはまれではないかと考えています。その理由は後で書きますが、まずは引っかかって開かなくなる仕組みの図をご覧下さい。
この図によると関節円板が大きく変形すると下顎頭がそれを乗り越えることができず関節がロックします。そこから無理に動かそうとすると周囲の靱帯や関節包が限界になり痛みが出ます。
理屈としては問題無いのですが・・・もし変形だけが原因だとすると、手術で関節円板を削る以外に治らないはずです。
しかし、実際には顎周りの筋肉(特に外側翼突筋)を調整すれば、ほとんどの場合痛みはとれ開くようになります。それにクリック感などがまったくない健全な顎の人でも、突然痛くて開けづらくなることもあるのです。それはこの関節円板変形理論では説明できません。
外側翼突筋が緩むと動きやすくなるということから考えると、外側翼突筋が緊張して常に関節円板を引っぱった状態になっているから開かないと考える方が自然です。
これは言い換えると関節円板が前方に移動したまま元の位置にもどらないという状態です。そうすると、口を開けようとしたときに関節円板がさらに前に押し出されることになり、関節に無理な力がかかります。それが痛みとなるわけですね。下の図のような感じです。
ジワジワと口が開かなくなる場合は関節円板の変形の可能性も考えられますが、ある日突然痛くて開かなくなった場合は、関節円板が戻ってこない状態である確率が高いと思います。
ですので、急に顎が開かなくなったらまずは筋肉性の原因を疑うことをオススメします。